[帰還試験問題]その2

2003年6月12日
敵のホバー部隊が最初に戻ってきた
こちらはクロークをしているため、先に見つけることが出来た
息の合った一斉射撃
[帰還]してきた敵のコクピットだけを狙って
俺は奇数機 相棒は偶数機
難なく敵ホバー隊を壊滅
「おい まだかよ!そのうち足の遅いのも帰ってきちまう!」
流石に相棒も焦ってきた

「こちらバーベイン 北側の倉庫には何も無い」
「諒解した こちらに戻って」迎撃を頼む と言いかけた時に
「あ、あ、ありました!敵の新型です!」
新米の歓喜に満ちた声が聞こえた
ほっとしたその刹那
「馬鹿野郎!そんな所でハッチを開けるな!」
あの冷静なアンゼリカが叫んだ
嫌な予感がした
「え?あっ!は、」はい! までは聞けずに 
豚のような悲鳴が一瞬聞こえて 通信は途絶えた
「おのれ!貴様ぁぁあ!」その後も雑音だけだった


「バーベイン!東へ向かってくれ!俺達も行く!」
「もう向かってるよ...ガンガン燃えていやがる...」


東の空が明るくなっていた
朝日ではなかった



「フェヌ!来るな!こいつ等化け物だ!引けぇ!」
バーベインの通信もそこまでだった
「畜生!何て早さだ!振り切れない!畜生!」
フェヌは気が動転していた
「落ち着け!もうすぐ着く!」


「まずいぞ..こいつはやばい...」
相棒の声もいつに無く真剣になった



東側の倉庫に着いた時には、もう焼け爛れたホバーらしき物しかなかった
「フェヌ!どこだ!?」
辺りを見渡すがそれらしい姿は無い
「フェヌ...」



目の前の倉庫の炎がグラッと揺れる
そこからフェヌグリーンのホバーが飛び出してきた
「生きていたか!フェヌ!」
喜びの余り叫んでいた
「アレは化け物だ!来るぞ!」
とっさに三機は身構えた

頭の上に敵ディテクターが忍び寄った


炎が揺れる


目の前に小さい火の玉が浮かんだ
それは増えていった

「クロークヒューマだ!」
俺は叫ぶと同時に撃ち始めた
「ヒューマなら引き撃ちで余裕だろ!」
ダンデも叫ぶと同時に間隔を空けつつ撃ち始めた
「普通のヒューマじゃねぇんだよ!当たれぇえぇえ!!」
狂ったようにバルカンを打ち続けるフェヌ
フェヌにはもう回りは見えていない
ガツン と重い音が
「うわっ!」
フェヌの機体が建物にぶつかった
「フェヌ!」
振り向いた時にはもうフェヌの機体は、小さい火の玉に囲まれていた
「ぅ、うわっぁぁあぁ」
通信が途絶えた
目の前で燃えている


「なんだあれは..なんて早さだ...」
相棒の声も震えていた
「あ、あれが敵の新型...」




「ヒューマノイドS+!」





もう偵察は終わった
新型がどんなものか解かった
ただ、化け物だった
奪取はおろか破壊も不可能



「この機体じゃ駄目だ!引くぞダンデ!」
「解かってる!でもこの足場じゃスピードが出せん!」


出来るだけの速さでその場から引いた
逃げた
敵前逃亡?
そんなことは知ったことか
すでに恐怖しかなかった




「よし!もうここまで来れば大丈夫だ!」
俺は息をついた
「流石にホバーには追いつけないようだな」
一息付いて計器を見直す




エネが無い




悪夢はまたもやってきた
それもそうだ
あれだけ撃ちまくって
光学迷彩も使い
全速力で逃げてきたのだ
残ってるわけが無い

「ダ、ダンデ..」
凍るような声で呼びかけた
「あぁ 解かってる もう残り少ないだろ..」
流石に解かっていたようだ
「とりあえず行けるとこまで行こう フェン先行しろ お前の機体の方が損傷が激しい」
「解かった」


二人は進み始めた
エネはみるみる無くなって行く


レーダーに反応

 
・・・そのうち足の遅いのも帰ってきちまう!・・・


それだった
ダンデは言った
「[例え一人になっても]あの新型の性能を伝えろよ..」

馬鹿野郎がっ!「お前を置いて行けるか...よ...」
振り向くとダンデの機体は止まっていた


なにやってんだよ おい


切なそうにこう言った
「エネ切れだよ はは ついてねぇなぁ」
「.....」
「さあ 行けよ..」
「.....」
「行けって言ってんだろ...」
「.....」
「行けェ!馬鹿がぁ!」
「お前が馬鹿だ!そこでそうしていろ!」
俺は何も考えずに、敵に突っ込んでいた



目の前が真っ白になった
















・・・貴方なんて、戦争で死んでしまえばいいのよ・・・















真っ白だった
死んだな おれは


天国か?














「ぃよぅ 相棒 目が覚めたか?」
あの軽口が耳に入った
「...地獄か.....」
「おいおい 第一声でそれかよ まいったな」
いつものやれやれという感じだった


俺は...
「生きて...いるのか...?」
戸惑いを隠せなかった

「おお お前は生きてるよ」
嬉しそうにそう言った

新型!
「そうだ!新型はどうなった!隊長は!?うぐっ..」
起き上がると、全身に痛みが走った

「まだ無理はしないで下さい」
メディックの一人がそう言った
「生きているのが不思議なぐらいですよ 今、先生をお呼びしますね」
小走りに走っていくメディック

「あの機体の性能は伝えておいた」
ぼそっと言い始めた
「あの性能を量産するのはM国には無理だろう だってさ」
相棒はゴロッと横になった
「あー いてぇなぁ」


「...隊長...達は...?」
病室には俺達二人しか居ない

「回収されたのは俺達二人だけだ... [ROC]も一機しか残らなかった..」


二人とも俯いたままだった



「...いてぇなぁ.....」


痛いなぁ...








しばらくすると廊下の方から小走りで誰かが走ってきた
「おーおー せんせーは元気だねぇ」
相変わらずゴロゴロしている


だが足音はヒールの音のようだ
部屋の前で止まる、と同時に勢い良くドアが開かれる

「フェン...」
「君は....!」
「フェン!」
彼女は走り寄って来た

「おーおー 他所でやってくれ」

「会いたかった!ごめんなさい!」
彼女は飛びついてきた
「いたた!いたいよ!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
「...俺のほうこそ 悪かった..」
彼女を抱きしめた
「ごめんなさい...」
もうそれしか彼女は喋らなかった
涙声の彼女の肩の向こうで、ダンデリオンは指で作った銃をこちらに向け



[頭に二発の威嚇射撃をした]
 
 
 
いやいや
読めば読むほど恥ずかしいw

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